福島県環境創造センター、野生生物共生センター、国立環境研究所、東京農業大学の研究グループは、東京電力福島第一原子力発電所事故後の福島県の帰還困難区域内とその周辺域のイノシシの放射性セシウム濃度について、5年間におよぶ長期的かつ広域的なモニタリング調査を実施した。

 2011年3月の原発事故後に実施されてきたモニタリング調査により、他の野生動物種に比べイノシシの筋肉中の濃度が高く、他地域への分散が懸念されていた。そのため、帰還困難区域内のイノシシの放射性セシウム濃度の現状とその変動の解明は、福島県全域の放射性セシウムの動態把握とイノシシの個体数管理に重要とされたが、これまで長期的な帰還困難区域全域のモニタリング調査は実施されていなかった。

 研究グループは、帰還困難区域において捕獲されたイノシシの筋肉試料により、2016年1月から約5年間にわたる長期的な放射性セシウム濃度のモニタリング調査を実施した。

 その結果、帰還困難区域内のイノシシの筋肉中の放射性セシウム濃度は、区域外のイノシシより高い濃度で推移していた。また、帰還困難区域内では、個体によるばらつきが大きかった。また経年変化に伴いやや減少傾向にあることが判明。さらに、帰還困難区域内のイノシシの放射性セシウム濃度は、8、9月の夏の時期に低く、2月の冬の時期には高い傾向があった。

 研究グループは、今後もイノシシに関する長期的な放射性セシウムの動態把握の必要があるとし、また、帰還困難区内外におけるイノシシの移動に着目した調査を進めることで、イノシシを介した放射性セシウム動態に関する知見や、イノシシの管理に資する知見を得る必要があるとしている。

論文情報:【Scientific Reports】Monitoring of radioactive cesium in wild boars captured inside the difficult-to-returnzone in Fukushima Prefecture over a five-year period

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