神戸大学極域協力研究センターは北極研究の推進に向け、ロシアによるウクライナ侵攻後もロシア人科学者との対話継続の必要性を訴える記事を国際学術誌「ネイチャー」に寄稿した。柴田明穂センター長らの研究グループが執筆したコレスポンデンス記事(※1)で、米ハーバード大学と共催したウェブ会議の結果をまとめている。
神戸大学によると、記事ではロシアのウクライナ侵攻が極域科学協力の今後のあり方に暗い影を投げかけているが、極域が地球温暖化の影響を顕著に受ける地域であるとして外交を通じて国際科学協力を実現することが重要と主張した。
同時に、今後の極域国際科学協力のあり方と、それを支える外交と国際法秩序について学術的に検討することを喫緊の課題として提示。相互に関連し合う文明の共存には敵味方に関係なく、あらゆる人が学術情報にアクセスでき、研究活動に参加できるオープンサイエンスが欠かせないと訴えた。
極域での国際科学協力は1959年の南極条約、1996年の北極評議会設立で法秩序が構築されたが、ロシアのウクライナ侵攻でロシアとロシア人科学者排斥の動きが出ている。北極評議会を構成するロシア以外の7カ国は議長国のロシア主催の会合に代表団を派遣せず、すべての下部機関会議に参加しないとする共同声明を発表した。
これに対し、南極条約協議国会議はロシアを排斥せずに予定通りに会議を開く方針を打ち出したが、南極条約協議国会議からロシアを締め出すべきだとの意見が出ていた。今回の記事はこの意見に対する反論となる。
※1 コレスポンデンス記事 過去の論文に対して意見を述べたり、論点について議論したりするための簡潔な記事