東北大学東北アジア研究センター(兼務 同大学院理学研究科地学専攻)の辻森樹教授らは、日本の国石である「翡翠(ひすい)」についての学術論文集を編集し、日本鉱物科学会英文雑誌に発刊する。
2016年、日本鉱物科学会が日本の国石として 「翡翠(ひすい)」を選定した。これを受け、日本鉱物科学会では、翡翠に関しての特集号を企画し、東北大学東北アジア研究センター辻森樹教授、糸魚川市フォッサマグナミュージアム宮島宏前副館長、国立科学博物館の宮脇律郎地学研究部長をゲスト編集者として、翡翠に関する論文10編に序文を加えて日本鉱物科学会英文雑誌第112巻5号に特集号‘Jadeite and Jadeitite’として発刊する。
約80年前、東北帝国大学助手(当時)の河野義礼博士が新潟県糸魚川産の翡翠を同定し、1939年に日本鉱物科学会の前身の一つ、日本岩石鉱物鉱床学会の和文誌に化学分析による論文を報告した。糸魚川に翡翠原石が産することが明らかになってから、複数の翡翠産地が国内で発見され、翡翠を構成する“ひすい輝石”と呼ばれる高圧下で安定な輝石の一種を含む岩石(変成岩)の産地も複数確認されている。それらの岩石はプレートが狭まる境界の地学現象を理解する上で大変貴重な岩石と言える。
今回の論文集に収録の論文は、日本人研究者による日本産翡翠の研究成果を主体とし、日本産の翡翠の特徴、世界の翡翠との比較、日本の翡翠の研究史をまとめた総論、天体衝突などの大きな衝撃によって隕石中に部分的に形成した地球外のひすい輝石に関する総論など、内容も多岐におよび、これは日本の国石として選ばれた翡翠の学術的な価値を日本から海外に向けて発信する役割を担っている。