八丈島で大発生したアシジロヒラフシアリを防除すべく結成された、東京都立大学、森林総合研究所、東京都八丈島八丈町からなるプロジェクトチームは、本種に効果的なハイドロジェルベイト剤と住民参加型防除プログラムを開発し、高い防除効果を確認したことを発表した。

 外来種であるアシジロヒラフシアリの高密度化や家屋侵入被害は、2016年頃から八丈島で深刻化し始めた。予備的研究により、本種は市販のアリ専用ベイト剤(毒エサ)を全く好まないことがわかったため、本種の防除にはこれまでにない新規のベイト剤を開発する必要があると考えられた。本グループでは、近年海外で用いられているが国内では初めての試用となる、極めて水分に富んだゼリー状の「ハイドロジェルベイト剤」に着目した。

 糖分を含む液体状の餌を好むアシジロヒラフシアリのために、ショ糖水を含むハイドロジェルベイト剤を用いたところ、誘引性が非常に高いことがわかった。殺虫成分としては、他種アリで有効なフィプロニルやホウ酸では効果が不十分だったものの、チアメトキサムが高い効果を発揮した。そこで、ショ糖水とチアメトキサムを配合したハイドロジェルベイト剤を住民に配布し、住民自ら敷地内に薬剤を一斉に散布するという地域一斉防除試験を企画・実行した。

 結果として、一斉散布実施後の数週間から1ヶ月程度、アシジロヒラフシアリの個体数が大幅に減少したことが確認された。また、一斉防除試験に参加した住民の事後アンケートでは、ベイト剤設置の簡便さと本種への防除効果に対して高い評価が寄せられたとしている。

 本研究は、日本で初めて導入したハイドロジェルベイト剤により、市販剤では困難なアシジロヒラフシアリ防除が可能であることや、住民参加型の防除プログラムが、人的資源の乏しい離島であっても外来種の防除に有効な手段となりうることを示した。今後の研究では、防除効果の評価のためのモニタリングも住民主体で行う計画だという。

論文情報:【Pest Management Science】Development of an effective hydrogel bait and an assessment of community-wide management targetingthe invasive white-footed ant, Technomyrmex brunneus

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