山梨大学大学院の若山清香助教らの研究グループは、フリーズドライで長期間保存した体細胞からクローン動物を作り出すことに初めて成功した。液体窒素を使わないため、安全かつ低コストで遺伝資源の保存が可能になる。

 生物多様性の維持は人類の未来にとって不可欠なため、いくつかの動物種で精子や卵子の保存が始まっている。しかし、液体窒素を使う現在の方法では、震災等で液体窒素を補充できなければ全て溶けて使用できなくなる。研究グループは、液体窒素を使わずに精子を保存する「凍結乾燥(フリーズドライ)」技術を開発してきたが、精子は幼弱や高齢、あるいは不妊のオスから採取できない。メスから卵子を採取することはどんな場合でも困難だ。

 そこで研究グループは性別や年齢、健康状態に関係なく採取可能な体細胞に着目。新鮮な体細胞であればクローン技術で子孫を作ることができるため、体細胞も遺伝資源となるが、これまでフリーズドライ化した細胞からクローン動物を作ることはできなかった。今回研究グループは、最適な凍結乾燥保護剤(エピガロカテキン)を見つけた。様々な試行錯誤の末に、ついにフリーズドライ化して最長で9か月間保存した体細胞からクローンマウスを作り出すことに成功した。調べたクローンマウスはすべて正常な繁殖能力を持っていた。

 今回開発した方法は、遺伝資源をどんな個体からでも回収でき、液体窒素を使わないため安全かつ低コストで保存できるため、遺伝資源の究極の保存方法になるとしている。研究グループは、地球で大地震や洪水が起こっても大丈夫なように、将来的に月の地下で遺伝資源を永久的にバックアップ保存することを提唱している。

論文情報:【Nature communications】Healthy cloned offspring derived from freeze-dried somatic cells

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