山梨大学の中尾篤人教授らの研究グループは、前向きな感情を脳内で司るドーパミン報酬系の活性化はアレルギー反応を抑えることを、マウスを用いた実験で示した。精神状態に関わる脳内部位とアレルギーとの関係を明らかにした世界で初めての知見となる。

 花粉症や気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患では、ポジティブな精神状態が、症状や薬の効果に大きな影響を及ぼすとされていたが、生物学的なメカニズムは不明だった。研究では、マウスを用いて、前向きな感情(やる気)を司る脳内のドーパミン報酬系という神経ネットワークをいくつかの方法で活性化し、そのアレルギー反応への影響を解析した。

 ドーパミン報酬系の中心となるのは脳内の中脳腹側被蓋野(VTA)という部位。実験では、マウスに対し、次の3つの方法によるVTAの活性化を行った。(1)脳を操作する最新の技術(DREADD)による人工的な活性化。(2)飲み水に混ぜた人口甘味料による自然な形での活性化。(3)ドーパミンの前駆体(材料)であるL-ドーパの注射による活性化。いずれの場合も、マウスの皮膚に惹起させたじんましん反応の大きさが有意に減少。これにより、脳内ドーパミン報酬系の活性化がアレルギー反応を抑える効果があることが示された。

 今回の研究結果は、ポジティブな精神状態を生じる特定の脳内ネットワークがアレルギーを生じる免疫のしくみと密接にリンクしていることを直接的に証明した世界初の知見。アレルギー患者を適切に診療し症状をコントロールするには、患者に前向きな気持ちを保ち続けてもらうことも日常生活の管理や投薬などと同時に大事なことが示唆されたとしている。

 なお、本研究は、山梨大学で初めてクラウドファンディングで研究費の一部を調達して実施した。

論文情報:【Allergy】Activation of the reward system ameliorates passive cutaneous anaphylactic reaction in mice

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大学ジャーナルオンライン編集部

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