埼玉工業大学は、産学官連携を推進する中、工学部機械工学科の皆川 佳祐准教授(機械力学研究室)が「浄水場設備用制振装置」を産学連携で共同開発した。2022年9月5~8日開催の日本機械学会「Dynamics and Design Conference 2022」において発表した。
皆川准教授は振動制御技術を専門としており、構造物の地震による被害を防ぐ免震・制振技術を主な研究テーマとしている。今回これまでの研究成果を生かし、株式会社エース・ウォーターと産学連携で「浄水場設備用制振装置」を共同開発した。浄水場に設置される傾斜板沈降装置の地震時の振動を抑制するもので、特許第7075071号を取得した。
浄水場は安全な水道水を地域に提供するために欠くことのできない重要な公共施設である。河川から取水した水は浄水場内の沈殿池の緩やかな水流の中で汚泥等を取り除かれる。その際、効率的に汚泥等を取り除く重要な役割を担っているのが沈殿池に設置されている傾斜板沈降装置である。しかし大地震時の長周期地震動の卓越周期と水槽の固有周期が合致したとき、液面は大きく揺れ、水槽の壁面と衝突することで装置が損傷する危険性があるという。
今回共同開発した制振装置は、特別に加工された金属棒の変形を利用して地震時の沈殿池の水や傾斜板沈降装置の振動を抑制する。現在、実際の施設への適用に向けた具体的な検討も進めており、東北地方の浄水場への導入が決定した。浄水場施設における耐震性能の向上は一層求められているので、今後も導入事例が増えてくることが見込まれる。