順天堂大学の研究グループは、国内のほぼ全てのHIV感染者の治療歴が含まれるナショナルデータベース(National Database;NDB)を用いて、抗HIV薬の使用率とその継続率について初のビッグデータ解析を実施した。

 日本人HIV感染者は10年前に比べ高年齢化していることが判明している。これに伴い、加齢に伴う疾患や糖尿病などの慢性疾患との合併の問題も浮上するため、安全に服薬が持続できる抗HIV薬の情報は大変重要となる。

 このような背景のもと、本グループはHIV感染症治療薬を対象とした日本初のデータベース研究を行った。当研究報告は、2011年1月から2019年3月までの期間に抗HIV薬の投与を受けた16,069名のHIV感染者を解析し、各治療薬の処方推移の特徴などを分析したものである。

 研究の結果、HIVを抑制する「キードラッグ」については、2011年からインテグラーゼ阻害剤の処方率が著明に増加し、2019年には95%に達した。反対に、非核酸系逆転写酵素阻害剤やプロテアーゼ阻害剤は変更される割合が高く、処方率が減少していた。インテグラーゼ阻害剤の薬剤変更率は最も低かったことから、長い期間変更されにくい(最も継続しやすい)キードラッグであることが示された。

 次に、キードラッグと組み合わされる「バックボーン」薬に関しては、処方割合の年次変化は小さく、テノホビルが約60%を維持していた。2017年からはテノホビル/アラフェナミドフマル酸塩の使用が増加し、2019年には70%を占めている。

 HIV感染者の併存症が増えることにより、今後日本ではHIV診療専門医だけでなく総合診療/プライマリケア医もこれらの薬剤を処方する機会が増えることが予想される。今回のビッグデータ解析による研究結果は、適切な治療薬選択において有用な指標になることが期待される。

論文情報:【Scientific Reports】Analysis of antiretroviral therapy switch rate and switching pattern for people living with HIV from a national database in Japan

順天堂大学

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