蛇咬症(毒ヘビによる中毒)は、世界中の農村地域で多く発生しており、年間で250万人が被害を受け、うち40万人に後遺症が残り、8万5千人が命を落としていると推定されています。長崎大学熱帯医学研究所チャベス・サナブリア・ルイス・フェルナンド助教らの研究グループは、蛇咬症と貧困、気候変動との関連性を調査し、その成果が2015年9月11日(アメリカ東部標準時)に電子ジャーナルScience Advances誌に掲載されました。

雌のBothrops asper(テルシオペロ)※出典元より

雌のBothrops asper(テルシオペロ)※出典元より

ヘビは変温動物であるため、その行動は気候変動の影響を受けます。例えば温暖化によってヘビの捕食圧が増大することが報告されており、人間への蛇咬症事故とも関連している可能性があります。また熱帯地域でみられる多くの寄生虫・細菌感染症が貧困と関連していることから、同研究グループは、気候変動と貧困の蛇咬症との関連に注目しました。

同研究グループは、2005年から2013年にコスタリカで報告された蛇咬症を対象に調査を行いました。コスタリカの気候はエルニーニョ・南方振動(ENSO)に左右されており、蛇咬症発生件数の変動はENSOと関係があることが分かりました。また高温が続くとその後に発生しやすく、雨が多い年の後には有意に減少する傾向がありましたが、それにもかかわらず降雨量が最も多い地域で集中的に発生しており、また貧困地域ではより多く発生することが明らかになりました。これらの結果は、蛇咬症が多くの熱帯病と同じように貧困層で発生しやすく、また気候変動の影響を受けることを示唆しており、チャベス助教らはさらなる研究の必要性を訴えています。

出典:【長崎大学】熱帯医学研究所チャベス サナブリア ルイス フェルナンド助教らの蛇咬症と気候変動との関連についての論文が電子ジャーナルScience Advancesに掲載

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