長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科の竹垣毅准教授らの研究グループは、魚類の雄親の「子殺し」行動が、栄養補給のためではなく、次の繁殖の求愛行動を再開するために必要不可欠なプロセスであることを世界で初めて証明した。

 子育て中の親が自分の子を食べてしまうフィリアルカニバリズム現象が、多くの動物で知られている。かつては異常行動とされていたこの現象は、現在では親の繁殖成功を高める繁殖戦略、あるいは、子を食べることで得られる親の栄養利益と理解されている。しかしながら、魚類の雄親による「全卵食行動」には、この仮説で説明できないケースがあった。

 そこで今回、同グループは、魚類の雄親による全卵食行動の意味を探るため、海産小型魚類のロウソクギンポ雄から卵を除去、あるいは追加する野外操作実験を行い、巣内の卵の存在が雄性ホルモン(アンドロジェン)を調節する鍵刺激であることを示した。つまり、雄は全ての卵を巣から取り除かなければ求愛を再開できないのである。さらに興味深いことに、雄は卵を食べずに巣の外に吐き出していることも確認された。これらの結果は、栄養利益を期待する卵食ではなく子の存在を消すことを目的とした「子殺し」であることを強く示唆している。

 本成果は、魚類の卵食行動を内分泌学的メカニズムからの全く新しいアプローチにより解明した極めて貴重な発見であり、2018年8月16日、米科学誌「Current Biology」で公開された。

論文情報:【Current Biology】Filial cannibalism by male fish as an infanticide to restart courtship by self-regulating androgen levels

大学ジャーナルオンライン編集部

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