国立環境研究所の野田顕リサーチアシスタント(元東邦大学大学院)らの研究チームは、千葉県北部の「空き地」として残存する草原の植生を調査した。その結果、明治時代以降、樹林や草原として維持されてきた空き地が複数存在し、草原性植物の種数も多いことが分かった。

 日本の住宅地などには小規模な草原と見なせる「空き地」が多数あり、かつては農業や生活を支える資源を供給する場として草原を積極的に維持していたが、過去100年間に著しく減少。草原性の動植物には絶滅危惧種も少なくない。

 研究チームは、千葉ニュータウン地域に点在する36か所の空き地の植物調査を行い、種多様性に影響する要因を分析した。その結果、草原としての歴史の長い空き地ほど在来草原性植物の種数が多かった。外来植物とその他在来植物には「歴史の長さ」の効果は認められず、外来植物は農地や宅地との隣接距離が長い草原で種数が多かった。

 また、在来草原性植物8種のうち、ネコハギ、チガヤ、ワレモコウ、メドハギ、ミツバツチグリ、シバの6種が草原として長期間維持された空地に出現しやすいことが分かった。またネコハギ、ワレモコウ、ミツバツチグリ、シバは、草刈りが実施されている場所で出現しやすい傾向があった。

 千葉県北部は江戸時代末期まで「牧(馬の放牧地)」が広く存在した。一部の草原は130年近く農地や宅地として利用されず、樹林や草原として維持・管理され、草原性植物の種数の多さにつながった。近年、生物多様性への国際的な関心や住民の健康・快適性等の観点から、都市近郊に残存する緑地の価値が注目されている。今回の研究は、計画的な緑地保全に寄与するとしている。

論文情報:【Applied Vegetation Science】Temporal continuity and adjacent land use exert different effects on richness of grassland specialists and alien plants in semi-natural grassland

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