東京農工大学、慶應義塾大学、九州大学の共同研究グループは、生物の細胞に類似した小さな鋳型でゼリーを作ると、通常のゼリーよりも約10倍硬くなることを発見した。またこの硬さの変化は、鋳型を覆う脂質膜によりゼリーを構成するタンパク質の構造が大きく変化するためであることを明らかにした。
ゼラチンからなるミクロなゼリー(以下、ミクロゲル)は、食品や化粧品、医薬品など、日用品に幅広く用いられている。しかし、それらの触感や質感、強度などの機能を強く支配する力学的性質は、その小ささゆえに測定が困難で、詳細な解析が渇望されていたという。
本研究では、細胞のような鋳型を用いて100分の1ミリメートルスケールのミクロゲルを作製し、非常に細いマイクロキャピラリーを用いてそれを引っ張ることにより、ミクロゲルの硬さの測定に成功した。そして、ゼラチンがゲル化する際に、脂質膜で覆われたマイクロメートルサイズの空間に閉じ込められていることで、ゲル化後の硬さが通常の大きなゲルに比べて10倍程度上昇することを見出した。
このミクロゲルの分子構造を調べたところ、通常のゼラチンが作る三重らせん構造だけでなく、βシート構造と呼ばれるユニットが連なった構造も同時に作っていることがわかり、この構造変化によってゲルが硬くなっていることが明らかとなった。
この発見で得られた知見は、ゲルの硬さを利用した機能性材料の設計に新しい視点を与え、今後、食品・医薬品・化粧品として活用されるミクロゲル材料の創成へ応用されることが期待される。また、ミクロゲルは細胞を支える骨格としても機能しており、本成果は細胞内の生体高分子ゲルの特性解明にも貢献が期待される。