京都大学・京都大学大学院、東京大学大学院の研究グループは、ともに葉が変形した器官である花びらと蕚(がく)が異なる形をしているのは、細胞分裂する場所の違いによるものであることを発見した。
花びらも萼も葉が変形してできた器官だが、それぞれ独自の形をしている。研究グループは基本形の葉からどういう「変態」によってこうした違いが生まれるのか検討した。
一般に器官の形の違いは、その器官を作る間に起きる細胞分裂のパターンで決まるとされる。研究グループはモデル植物シロイヌナズナを使って実験した。花びらと萼を対象に、細胞分裂の位置と方向を調べると、花びらと萼の間には、それぞれ細胞分裂の位置でも方向でも違いが検出された。
そこで、数理シミュレーションにより位置と方向のどちらが形を決めているのか調べた。花びらや萼ができてくる間の細胞分裂の位置をさまざまに変化させると、最終的なシミュレーションの形はそれに応じて大きく変化し、花びららしい形や萼らしい形を生んだが、細胞分裂の方向の違いによる効果は限定的だった。これにより、花びららしい形や萼らしい形は、各器官が作られる間の細胞分裂の位置決めによって決まっていることが判明した。
また葉、萼、花びらのそれぞれができる時の細胞分裂の位置は、研究グループが以前発見した遺伝子(AN3)の働く場所と一致していることも分かった。
今後、この知見を応用することで、葉の形や花びらの形を自由に設計できるようになる可能性がある。またこうした細胞分裂の場所の違いを生む分子メカニズムの解明も進むことが期待されるとしている。