近年スマホ首やストレートネックとして注目される頭頸部前方位姿勢は、若年者をはじめ幅広い年齢層に見られる姿勢だ。金沢大学、中京大学、広島大学、マーケット大学(アメリカ)の共同研究グループは、頭頸部前方位姿勢における易疲労性の要因が僧帽筋上部線維の筋活動の異常にあることを明らかにした。
常に頭が前に出た姿勢を続けると、頭痛や肩こりといった様々な症状が発症し、同じ姿勢を長時間保持すると疲れの訴えが大きいが、その要因は不明だった。
研究グループは、習慣的に頭頸部前方位姿勢(頭頸部角度53 度未満)をとっている若年者(FHP群9名)と、頭頸部の位置が正常(同53度以上)な若年者(正常群10名)を対象に、3種類の異なる座位姿勢(安楽な姿勢、頭頸部を前に出した姿勢、頭頸部を後ろに引いた姿勢)をそれぞれ30分間保持させ、姿勢保持時の頭頸部の筋活動と疲労の関係を検討した。
その結果、FHP群は、正常群と比較してすべての姿勢で疲労の訴えが強く、僧帽筋上部線維の過剰な筋活動が生じていた。さらに、正常群は、安楽姿勢が最も疲労の訴えや筋活動量が少なかったが、FHP群は全ての姿勢で強い疲労の訴えや過剰な筋活動を呈し、頭頸部の位置を変えても疲労や筋活動量は変化しないことが明らかになった。
今回の結果は、頭頸部位置を変えるだけではFHP群の疲労は軽減しないことを意味しており、僧帽筋上部線維の筋活動異常を是正することが重要であることが示唆された。これらの知見は将来、頭頸部前方位姿勢への介入方法や快適な座位姿勢の実現に向けたシート開発に活用されることが期待されるとしている。