2022年10月、静岡理工科大学は日本DMC株式会社と、3次元点群データ上での人の位置情報のリアルタイム共有方法の共同研究実施契約を締結した。
日本政府が提唱する「Society5.0」の社会実現には、3次元空間情報基盤の実装・普及が不可欠である。そのためには様々な空間情報が空間IDを共通インデックスとして分野横断の連携を実現し、バーチャルとフィジカルの融合促進に様々なアプリケーションが活用される必要がある。
共同研究では、そうしたアプリケーションの一つとして、点群データが持つ静的な位置や属性の情報に、時間変化する動的情報を加えることを目的に、三次元点群データと衛星測位システムによる位置情報をリアルタイムに可視化するシステムを開発する。
日本DMCで空間情報技術開発部デジタルサービスグループのグループリーダーを務める杉本 貴章氏によると、3次元のデータ上で共有可能なシステムは数が少なく、スマートフォンのWebブラウザからアクセスするのみで、3次元点群データ上に簡便に位置情報を共有可能なシステムは今のところ見当たらないという。
今回の共同研究では日本DMCの平面的な地図にはない高さ情報をもった三次元点群データを活かし、まずは点群データ上にオンタイムでGNSSデータを共有することを試している。点群データの計測には様々な方法があるが、本研究では航空機(航空レーザ測量)、背負い型(LidarSLAM機器、およびGNSS搭載LidarSLAM機器)、固定型(地上レーザスキャナ)で計測した点群データを使用している。
研究成果をもとに、今後、都市部の災害時避難状況のリアルタイム可視化などのサービス提供につなげることを予定している。また、理工学部建築学科の石川 春乃准教授によると、急速に点群データの利活用が進む土木分野に対して、建築分野では後れを取っているが、日照や温熱、気流など都市環境要素の可視化ニーズは高いという。これにより、莫大な資本力や専門技術の蓄積、専有データ量なしに地方自治体の点群データなどオープンソースを使い建築分野に展開する可能性を示すとしている。
参考:【静岡理工科大学】日本DMC株式会社と共同研究実施契約を締結:三次元点群データを活かした、都市空間のスマートフォンの位置情報を即時共有するシステムの開発