世界人口が2050年に98億人に達すると推計される中、気候環境の変動、肥料資源の枯渇といった要因が食料供給を脅かしている。
 こうした中、課題解決の突破口として期待されているのが、植物と共生する微生物たちだ。植物の体内や体表面には菌類が普遍的に存在し、植物の生長を促進したり、病害虫を抑制したりしていることがわかっている。

 一方で、微生物はあまりに種類が豊富で、「微生物叢」(微生物の集まり)全体を制御するのは困難だ。そこで、京都大学らの研究チームは、微生物叢の動態を大きく左右する「コア共生微生物」を選抜し、あらかじめ植物の種子や苗に接種することで、微生物叢の機能を最大限に発揮させる新たな戦略を提案した。

 従来、農業における有用微生物の探索は、単一の種を基準として行われてきた。しかし、実際の農地では、無数の菌類の複雑な相互作用により植物の生長や生存が左右されている。そのため本研究では、微生物叢全体を俯瞰し、その動態を大きく左右する種を「コア共生微生物」と命名。中でも宿主植物の健全な生育を助ける種を取りまとめるリーダーにあたるものを、あらかじめ植物に接種することを提案した。

 植物共生微生物の世界では、先に植物体に入った共生菌が、後から侵入しようとする菌を選別したり排除したりできる(先住者効果)。これにより、好ましい微生物だけを引き寄せ、持続可能な農業生態系の基礎とするしくみ。より低リスクで効率的な農業生産や生態系の再生につながることが期待される。

 本研究では、コア共生微生物の候補を探し出す評価手法のプロトタイプを考案しており、今後も適切なコア共生微生物を探索する学際的手法を開発していく予定としている。

論文情報:【Nature Plants】Core microbiomes for sustainable agroecosystems

京都大学

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