東邦大学理学部の山口耕生準教授をはじめとした研究グループは、白亜紀末の巨大衝突クレーターの形成後、ごく短期間で生命圏が復活したことを発見し、英科学雑誌Natureに発表した。
白亜紀の終焉は、約6,600万年前の小天体の衝突によってもたらされた。環境の激変により、恐竜を含む生物(当時の約76%)が大絶滅し、その後、新たな生物相が古第三紀に繁栄するようになったが、天体衝突後の生命および生態系の復活はどのようなものであったのだろうか?
衝突時に形成された直径約200kmのクレーター内部での生命圏復活のシナリオを描くため、国際深海科学掘削計画による掘削が2016年に行われ、全長800 mの柱状試料が採取された。同グループは白亜紀からの移行期を含む約1m長の堆積岩に焦点を当て、この試料を用いて、微化石(プランクトンの遺骸)や生痕化石(生物の生活痕の化石)の分析をした。その結果、クレーター内では、衝突後2-3年以内という極めて短期間で生物および生育可能な環境が復活し、少なくとも3万年以内には植物性プランクトンが作る有機物をベースにした多様な生態系が復活していたことを突きとめた。同時代の地球上のどの地点よりも、クレーター内での生態系の復活が早かったのである。つまり、天体衝突は大量絶滅を引き起こしはしたが、生物の復活を長期間にわたり妨げるものではなかったといえる。
本研究は、生物絶滅後の海洋生態系の復活に関して、重要な示唆を与えるものである。
論文情報:【Nature】Rapid recovery of life at ground zero of the end Cretaceous mass extinction