害虫の王者といわれるナミハダニと近縁種のカンザワハダニがチョウやガの幼虫である芋虫の足跡を避けることを、京都大学大学院農学研究科の金藤栞大学院生、矢野修一助教、京都工芸繊維大学応用生物学系の秋野順治教授らの研究グループが突き止めた。
京都大学によると、研究グループは芋虫のカイコ、セスジスズメ、ナミアゲハ、ハスモンヨトウを歩かせたインゲン豆の葉とそうでない葉を置き、ナミハダニとカンザワハダニのメスの成虫がどちらの葉に定着するかを調べた。
その結果、どちらのハダニともすべての芋虫の足跡を避けることが分かった。過去の研究でハダニの仲間は捕食者のアリやカブリダニの足跡を避けるが、草食で捕食されないアブラムシの足跡を避けないことが明らかになっている。芋虫も草食だが、命を脅かす捕食者と同様に判断していることになる。
ハダニの仲間は体長0.5ミリ以下なのに対し、芋虫は10センチ近いものがいる。研究グループは大食いの芋虫が産み付けたハダニの卵ごと葉を食べつくすことから、捕食者と同様に危険な存在と感じているのではないかとみている。
ハダニの仲間は10日ほどで世代交代するため、農薬に対する耐性を持ちやすく、野菜を栽培する農家にとって大敵になっている。研究グループは芋虫の足跡物質を利用することでハダニ退治の道が開けるとみている。
論文情報:【Scientific Reports】Spider mites avoid caterpillar traces to prevent intraguild predation