東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学の宮脇敦士大学院生、李廷秀特任准教授、小林廉毅教授の研究グループは、学校給食における適切な栄養基準に基づいた食事の提供が、思春期の肥満を減らす有効な施策の1つであることを示唆した。
我が国は、思春期の肥満率が低いことが知られている。日本の小中学校の給食では、適切な栄養基準のもとで提供された同じ食事を学校の生徒全員が食べているため、「給食の提供」が、低い肥満率の理由の1つとして挙げられてきた。しかしながら、それを支持する証拠はこれまでなかった。
そこで、今回、同グループは、政府統計の公開データから、「2006年から2015年の都道府県(以下、県)レベルの給食実施率」、「県レベルの栄養状態の指標(過体重・肥満・やせの生徒の割合、平均身長、平均体重)」を性・年齢別に抽出した。前年の栄養状態の指標、県・年齢・観測年などを考慮した上で、前年の県レベルの給食実施率と翌年の栄養状態の指標の関連を調べた。
解析の結果、県レベルの給食実施率が10%増加すると、翌年の過体重の男子の割合は0.37%、肥満の男子の割合は0.23%低下することが分かった。女子については、統計学的に有意な結果ではなかったものの、過体重・肥満を減らす傾向が見られた。つまり、給食の実施が思春期の肥満を減らす有効な施策の一つであることが示唆された。
給食が実際に過体重・肥満を減らすという効果を実証したのは本研究が初めてである。