大阪公立大学大学院の安木真世准教授らの研究グループは、大阪公立大学の獣医臨床センター、大阪大学の微生物病研究所と共同で、ペットとして飼育されているイヌから、コリスチンと第三世代セファロスポリン両方の抗生物質に耐性を示す大腸菌を国内で初めて発見した。
ヒトで注視されている指定耐性菌の1つに第三世代セファロスポリン耐性大腸菌がある。この大腸菌は第三世代のセファロスポリン抗生物質が効かないため治療にコリスチンが使用されているが、コリスチンの汎用に伴いコリスチン耐性大腸菌が出現した。現在では第三世代セファロスポリンとコリスチン両方の抗生物質に耐性を示す大腸菌の世界的拡大が問題とされる。一方、薬剤耐性菌はペットからも確認されているが、ペットが持つ薬剤耐性菌の性質やヒトとの間での双方向的な伝播リスクについては研究が進んでいない。
今回の研究では、獣医臨床センターに来院した感染症疑いのイヌ428匹、ネコ74匹から分離された細菌 687 株を対象に調査を実施。その結果、可動性コリスチン耐性 mcr 遺伝子と第三世代セファロスポリン耐性 blaCTX 遺伝子を両方持つ大腸菌を 2 株発見し、そのうちイヌから発見された1菌株は、コリスチンと第三世代セファロスポリンの両方に耐性を示すことを明らかにした。
少なくとも大阪府下のペットのイヌにコリスチン耐性大腸菌はまだ蔓延していないという。しかし、今後拡大する可能性はあり、継続的なモニタリングが不可欠。また、今回検出された薬剤耐性大腸菌の伝播元も不明。今後、ペットだけではなく飼い主や周囲環境、食餌を含めた包括的評価へと研究を展開し、ヒトとペット間の伝播リスクの評価につなげたいとしている。