帝京大学大学院医学研究科の郭 宇医真菌学医師、同学医真菌研究センターのアレシャフニ ムハンマドマハディ助教、および同センターの槇村浩一副センター長らの研究グループは、日本動物園のコアラ飼育室から新種の酵母を発見したことを発表した。
コアラは、Cryptococcus属の病原性酵母が引き起こす感染症であるクリプトコックス症に罹患しやすいことが知られている。俗にコアラ病とも呼ばれるクリプトコックス症から希少動物であるコアラを守るため、本研究グループは、20年以上にわたって日本中の動物園で飼育されているコアラやコアラ飼育室の真菌の種類や量の定期調査を続けてきた。
この活動の中で、今回、飼育室に設置されているコアラの止まり木に、Cryptococcus属をはじめとする酵母がどれくらいいるのかを測定していたところ、これまでに種名が記載されていない新種の酵母が含まれていることを発見した。黄色がかったピンク色のコロニーを形成することにちなみ、本菌は「Begerowomyces aurantius(ベゲロマイセス・アウランティス)」と命名された。帝京大学医真菌研究センターがコアラ関連で命名した新種酵母は今回で5例目となる。
培養試験の結果から、本菌に病原性はないことが考えられるとしているが、本菌が属するBegerowomyces属は2020年に新属として記載されたばかり。いまだ未発見の性質を持つことが期待される。
ヒトと同じく動物の鼻腔にもさまざまな微生物が常在しているが、動物によってどのような微生物が生育しているかは未知数である。コアラにも独自の微生物叢が形成されている可能性があり、同センターは今後もこれら微生物がヒトや動物におよぼす影響について調べを進めていくとしている。