農業・食品産業技術総合研究機構の上原拓也研究員ら農研機構、東京大学、筑波大学の共同研究グループは、世界各地に分布するアブの仲間・アメリカミズアブ幼虫の腸内細菌を含む飼育残渣を食品廃棄物に加えることで独特の臭気を抑える技術を開発した。
農研機構によると、研究グループは食品廃棄物を入れた容器にアメリカミズアブの幼虫を3~10匹入れて7日間飼育し、入れなかった場合と比べて食品廃棄物の臭気にどのような変化があるかを調べた。
その結果、悪臭物質の代表に挙げられる二硫化メチル、硫黄臭を放つ三硫化メチルの発生量がアメリカミズアブの幼虫を入れた容器で大幅に少ないことを見つけた。アメリカミズアブの腸内細菌に悪臭の元となる物質を代謝、分解する酵素があるためとみられる。
さらに、幼虫の腸内細菌を含む飼育残渣を食品廃棄物の添加することで、腐敗臭気の発生を最大7分の1に抑制できることも分かった。
世界で生産される食品の3分の1が消費されずに廃棄され、日本国内では年間1億トンもの有機廃棄物が生まれている。食品廃棄物を再利用する取り組みは始まっているが、雑菌の繁殖などで食品廃棄物から強い悪臭が出ることが問題になっていた。
アメリカミズアブの幼虫を使った悪臭除去方法は化石燃料で燃やさないため、地球にやさしいうえ、育てた幼虫は養殖魚やニワトリのエサに利用できる。
アメリカミズアブは北中米原産とされるが、現在世界各地に分布する。成虫は体長15~20ミリ、幼虫は体長20~28ミリ。人や動物を刺すことはない。