京都大学のダニエル・パックウッド講師と東京工業大学の一杉太郎教授は、機械学習を使って、金属基板上の分子の配列を予測するガイドラインを作ることに成功した。

 エレクトロニクスデバイスのさらなる小型化・高集積化が要望される中、分子の「自己組織化」が注目を集めている。分子自己組織化とは、基板上に付着した分子が分子間引力によって互いに引き合って集合し、微小な構造(超分子構造)を自発的に形成する現象。ナノエレクトロニクス開発に向けて、微小な電気配線(ナノ電線)や、電子素子として利用可能な超分子構造を作る際に活用できる可能性があり、研究活動が活発になっている。しかし、分子を望み通りの構造に自発的に集合させるためのガイドラインが存在せず、応用への展開がなかなか進まなかった。

 本研究では、数理科学・理論化学を専門とするパックウッド講師が、材料科学を専門とする一杉教授と共同研究を実施。「教師なし機械学習」を活用して、基板上の分子を望み通りに集合させるためのガイドラインを作成した。教師なし機械学習とは、様々な対象物をコンピュータで比較し、それらを共通の特徴に分類するもの。今回は、分子の化学的特徴とその分子の集合過程がどのように関わっているかを学習し、その結果を図式的にまとめた。そして、この図を解析することにより、ガイドラインが導かれた。

 このガイドラインにより、例えば電気配線として利用可能な直線状の超分子構造を形成する際に、どのような分子を用いればよいのか予測することができる。本成果は、微小デバイスにおいて必要な部品を形成することにつながり、ナノエレクトロニクス開発を加速させるものと期待される。

論文情報:【Nature Communications】Materials informatics for self-assembly of functionalized organic precursors on metal surfaces

京都大学

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