広島大学大学院の栗栖あけみ特任学術研究員らの研究グループは、全国の健康保険組合加入者約990万人のレセプトデータ8年分を解析し、日本におけるてんかんの有病率、発症率を明らかにした。
てんかんは、乳幼児から高齢者までどの年齢層でも発症する可能性があり、患者数の多い神経疾患のひとつ。先進国での有病率(ある一時点での有病者の数の割合)、発症率(一定期間内の疾病新規発生の程度)は報告されているが、日本でのてんかんの有病率、発症率に関する全国規模の疫学調査研究報告はこれまでほとんどなかった。
今回、研究グループは全国の健康保険組合加入者9,864,278 人のレセプトデータ(2012年1月~2019年12月)を解析し、年齢・性別・暦年ごとのてんかんの有病率ならびに発症率を明らかにした。
その結果、てんかん有病率は人口1,000人あたり6.0人(男性6.1人、女性5.8人、2019年)であり、これまでに報告されている先進国での有病率(人口1,000人あたり4~8人)と同水準だった。
てんかん発症率は、10万人年あたり72.1人(新規てんかん患者/総観察人年[2012年~2019年]×10万)だった。これまで報告されている先進国におけるてんかん発症率(人口10万人あたり1年間で約45~49人)と比べ、約1.5倍高値だった。年代別にみると、0歳と70~74歳がその他の年代よりも著しく高い、U字曲線となっていた。日本のてんかん発症率について算出した報告はこれまでになく、初めての報告だ。
患者の規模(有病率と発症率)を把握することは保健医療戦略を考える上で重要であり、今回の研究は、全国地域を網羅する大規模一般集団を対象とした解析結果に基づく、てんかんの疫学的実態を明らかにしたものとしている。