名古屋大学、未来材料・システム研究所、ナポリ大学(イタリア)の共同研究で、イタリア・ナポリの市街地下にギリシャ時代の未知の埋葬室が発見された。
ナポリ街並みの地下10メートルには、紀元前1千年後半頃にギリシャ人によって建設された古代ネアポリスの遺跡が眠っている。しかし、ナポリのような大都市の人口密集地では、建物や道路の安全性に配慮が必要で、発掘による考古学的調査は極めて困難である。
このような都市環境では、大気上空で生成される素粒子ミューオンが持つ高い透過力を利用して物体の内部を可視化する、「宇宙線イメージング」の技術が適している。宇宙線イメージングは、非破壊で地下構造を可視化する上で優れた技術であり、本グループはこれまでに、この技術によってエジプトのクフ王ピラミッドの内部に未知の空間の発見などを報告している。
本グループは、ナポリの地下遺構に未知の埋葬室が存在するとの仮説を立て、宇宙線イメージングによる探査を行った。その結果、既に知られている地下構造では説明できないミューオンの超過領域を検出し、その超過領域が示す空洞の大きさと地下空間での位置を推定した結果、地下約10メートルに位置する2~3メートルの大きさの新しい埋葬室であると判明した。
本研究は、宇宙線イメージングにより複雑な三次元構造を持つ地下遺構を可視化し、ギリシャ時代の埋葬室を新たに発見したことで、宇宙線イメージング考古学という文理融合研究をさらに発展させる成果である。
また、宇宙線イメージングが地下構造の把握に極めて有効な手段であることも実証したといえる。地下空洞は国内で年間約9,000件もの陥没事故の原因となっていることから、このような事故を引き起こす地下空洞を宇宙線イメージングによって探査するなど、新たな防災技術への応用も期待できる。