名古屋大学大学院と未来材料・システム研究所の研究グループは、世界最大規模のクフ王のピラミッドのシェブロンと呼ばれる石組み構造(切妻構造)の背後にある未知の空間の位置と形状を、ピラミッドを破壊せずに数cmという高い精度で詳細に特定した。研究には、カイロ大学(エジプト)、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、CEA(フランス)などが参加している。

 エジプトのクフ王のピラミッドは、約4,500年前に建造された世界最大規模の石造建築物。ピラミッドの北側には、クフ王のピラミッドにしかないシェブロンと呼ばれる特徴的な切妻構造の石組みが見られ、シェブロンの下には、建造当時のピラミッドの入り口があり、その通路は地下の間へ向かうことから下降通路と呼ばれる。研究グループは、2016年に、下降通路に設置した原子核乾板検出器(写真フィルム型の素粒子検出器)により宇宙線ミューオンを観測し、シェブロンの背後に南北に延びた通路状の未知の空間を発見していた。

 研究グループは今回、この空間が、シェブロンの表面から80cm背後におよそ2m×2mの断面を持つ長さ約9mの空間であることを、数cmという極めて高い精度で特定した。これには、多地点宇宙線イメージングと呼ばれる技術が用いられ、宇宙線中のミューオン(素粒子の一種)が持つ、厚い物質でも通り抜ける性質を利用したもの。また、この空間は水平構造であることも判明した。

 今後は、2017年に本研究グループが発見したクフ王ピラミッドの中心部に位置する巨大空間との関係性や、空間の役割に関する考古学的考察などの異分野にまたがる融合研究へと発展し、クフ王のピラミッドの謎の解明につながることが期待されるとしている。

論文情報:【Nature Communications】Precise characterization of a corridor-shaped structure in Khufu’s Pyramid by observation of cosmic-ray muons

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