広島大学の研究により、東京2020パラリンピック競技大会時のブラインドサッカー競技において、1試合あたり52回もの頭部接触が生じていたことが明らかとなった。
視覚障がいを持つアスリートがアイマスクを装着した状態で行うブラインドサッカーは、視覚情報が完全に断たれた状態でサッカーを実施するため、パラスポーツのなかでも怪我の発生が多い競技である。本研究では、危険な怪我に繋がりかねない頭部接触の予防策を検討する情報を得るため、東京パラリンピック大会中のブラインドサッカー競技全18試合の映像を分析し、頭部接触がどの程度、またどのような状況で生じているのかを調べた。
その結果、頭部接触は全試合を通じて940件も発生しており、1試合あたり52回、1分あたり1.3回もの頻度で生じているという、当初の予想を遥かに超える現状が浮き彫りとなった。それにも関わらず、頭部保護に重要な役割を担うと考えられるヘッドギアの装着率は、わずか26%(約1/4)に留まった。このことは、ヘッドギアの有効性に関して選手やコーチへの啓蒙活動を行う必要性を示唆している。
転倒を伴うほどの激しい頭部接触は、1試合あたり12件発生しており、予選ラウンド、攻撃時、ドリブル中に特に多いことも分かった。また、接触対象と頭部接触部位の関連については、敵とは顔面、味方とは前頭部、設備とは後頭部を接触する割合が高いことも判明した。
ブラインドサッカーの試合中に生じる度重なる頭部接触を見過ごすことなく、可能な限り危険な怪我を予防するために対策を講じる必要がある。本研究が示した結果は、ブラインドサッカー競技中の頭部傷害の予防策を検討する上で重要な知見となることが期待される。