新潟大学の榎本隆之教授らの研究グループは、日本人女性に対する調査で、子宮頸がんワクチン(2価ワクチン)のヒトパピローマウイルス(HPV)16/18型感染予防に対する有効率が90%以上と高い数字を示したことを明らかにした。ワクチンによる 一次予防の恩恵について見つめ直す機会であるとしている。
日本では子宮頸がんにより毎年約2,700人が死亡している。HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは、子宮頸がんの60%~70%の原因となるHPV16/18型の感染を予防するワクチンで、国が定める定期接種ワクチン(12~16歳女子対象、3回接種)の一つだ。しかし、2013年6月以降は厚生労働省が積極的勧奨を中止し、ワクチン接種者は現在ほぼゼロ。国外ではHPVワクチンの高い有効性が報告されているが、日本では大規模研究によるHPV感染予防効果の報告はなかった。
今回、新潟県内主要都市での子宮頸がん検診受診者を対象とした。研究は2014年度に開始され、HPVワクチンの公費接種世代を中心とした20代前半を対象に現在も継続中だが、今回は2014~2016年度の3年間における20~22歳のHPV感染率を中間解析として検証した。
研究の登録者は、HPV2価ワクチン接種者1355人(74.6%)、非接種者459人(25.4%)で、ワクチン接種者のうち1295人(95.5%)は3回接種を完了。ワクチン接種者のHPV16/18型の感染率は0.2%、非接種者の感染率は2.2%で、ワクチンの有効率は91.9%と高い感染予防効果を認めた。特に、初交前のワクチン接種者では、HPV16/18型に対する感染予防効果の有効率は93.9%とさらに上昇し、HPV31/45/52型に対しても感染予防効果(有効率67.7%)を認めた。
今後は、子宮頸部の細胞診異常や前がん病変に対する予防効果についても引き続き検証を行う予定という。