近年、3Dプリンターを中心としたデジタルファブリケーション(コンピューターによって制御される工作)技術は、新たなものづくりの方法として大きな注目を集めている。しかし、立体を出力する際に数十分から数時間と時間がかかる点、一度造形してしまうと、粘度のように即興的に作り直すことや素材を再利用することができない点が大きな制約となっていた。

 これらの問題を解決する手法として、東京大学の研究グループは、磁石が埋め込まれた9ミリメートルサイズのブロック約3,000個を使い、任意の3次元形状を素早く造形できる3次元物体造形装置「Dynablock(ダイナブロック)」を開発した。8層にわたり積み重ねられたブロックを、リニアアクチュエーターアレイで下から押し出し、磁石の力で自動結合させることで高速な組み立てを実現するしくみ。出力される3次元物体の断面を1層ずつ押し上げて造形していくが、1層あたりの出力時間は1秒未満なので、数層程度の3次元物体であれば数秒から数十秒で造形することができる。必要がなくなった物体は、押し下げればブロック同士の結合が離れるため、素材の再利用も可能だ。

 高速かつ再利用可能な3次元形状の造形を実現するダイナブロックの特徴を活かし、ものづくりにおけるプロトタイプ(試作)作製やデザインの高速化への応用が期待される。また、今後は、個々のブロックの内部にセンサーやLED、ICチップなどを組み込むことで、周りの状況に応じて色や質感や形が動的に変わるような機能性をもつ物体の造形や、造形時間のさらなる高速化を目指すといい、長期的には3次元実体ディスプレイへの応用も期待される。

参考:【科学技術振興機構】数十秒で出力でき、再利用も可能な3次元物体造形装置を開発 ~試作やデザインの高速化、および3次元実体ディスプレイへの応用に期待 ~

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