東京大学医学部附属病院消化器内科の研究グループは、B型肝炎ウイルスの複製に重要なウイルスタンパクHBxと宿主タンパクDDB1との結合を阻害する薬剤の効率的なスクリーニング系を構築し、B型肝炎治療候補薬剤としてニタゾキサニドを同定した。
B型肝炎は、全世界で2億5千万人以上が罹患し、毎年約90万人が死亡している病気である。現在の医療では、体内から完全にウイルスを排除することも、ウイルスRNAやウイルスタンパクの産生を止めることも難しいため、抗ウイルス薬の服用を一旦始めると、一生服薬を継続せざるを得ず、患者の負担など様々な問題を引き起こしている。
そこで、同研究グループは、相補型スプリットルシフェラーゼアッセイという特殊な技術を応用し、HBxとDDB1との結合阻害剤を簡便に探せるスクリーニング系を構築した。これに、米国食品医薬局(FDA)がすでに認可している817種の薬剤を添加してルシフェラーゼ活性変化を観察したところ、ニタゾキサニドという薬剤が、ルシフェラーゼ活性を強力に抑制することが分かった。さらに研究を進めたところ、ニタゾキサニドは、現在B型肝炎治療に広く用いられている製剤では抑えることのできないウイルスRNAの産生を抑制することも確認できた。
以上の成果より、ニタゾキサニドは、既存のB型肝炎治療薬では達成困難なHBs抗原陰性化を実現する「新規のB型肝炎治療薬」となることが期待される。