東京大学、産業技術総合研究所、筑波大学の研究グループは、熱や痛みの伝達を司るTRPチャネルの1分子内部運動を、マイクロ秒オーダーで実時間計測することに世界で初めて成功した。疼痛認識機構の理解や、新しい鎮痛剤の開発等への貢献が期待される。

 TRPチャネルは4つのサブユニット(タンパク質の副次的単位)から構成され、細胞膜を24回貫通する分子で、ヒトや多様な動物種の複数の感覚刺激の応答に関与することで知られる。最近、詳細な分子構造が決定され、研究が一層加速され注目を集めている。しかし、複雑な分子構造のため、チャネル開閉に伴う運動の実時間計測に誰も成功していなかった。

 今回、TRPチャネルを活性化させるカプサイシンを添加した実験を実施。チャネルを開けてイオンを流す動きは、右回りのねじれ運動を伴い、またチャネルを阻害する薬剤を添加した実験では、それと逆向きに左回りのねじれ運動を検出した。さらにカプサイシンが反応しない変異体TRPチャネルを使った実験では、阻害剤を加えた時と同様にチャネルの運動を抑える左回りのねじれ運動が検出された。このように各種条件下でリアルタイムにダイナミックな動きを検出することに成功した。また、これらの動きがすべて1ミリ秒あたり数十pm2(平方ピコメートル)という極めて小さい拡散定数(ブラウン運動の大きさを表す定数)で動いていることも判明した。

 TRPチャネルはヒトの痛みのメカニズムに大いに関連しているため、これらの結果は疼痛認識機構の理解や、新しい鎮痛剤の開発等に役立つと見られる。また27種あるTRPチャネルの中には、疾病の発症と密接に関係している分子も多く、治療薬開発が期待される。

論文情報:【The Journal of Physical Chemistry】Agonist and antagonist diverted twisting motions of single TRPV1 channel

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