慶應義塾大学の宮本佳明専任講師らの研究チームは、長年の謎であった台風の構造が急激に変化する現象について、気象学の基礎理論を基に新しい理論を構築し、メカニズムの解明に成功した。

 発達した台風には、中心付近に雲のない「眼」と、それを取り囲むリング状の雲「眼の壁雲」がある。強い台風では、中心より外側にもう一つリング状の雲「外側壁雲」が形成することがある。この場合、台風の構造が急激に変化し、強度が劇的に変化するため、台風の強度予報が非常に難しくなる。しかし、その形成メカニズムは台風研究の中でも最大の謎の一つとされてきた。

 研究チームは、既存の理論(エクマン理論)を発展させ、台風の風の場がある条件を満たすと、リング状の上昇流(外側の壁雲)が形成されるという解が存在することを発見した。この上昇流は、地表面の摩擦によって駆動される地面付近の流れ(高度数100m)と、対流圏下層(高度数km)の流れが相互に作用することで生じる。エクマン理論では、上昇流と水平方向の流れ分布が正の関係を持つことが重要だが、今回の研究では、発達した台風ではこの関係が逆転し得ることを発見した。一度この関係が逆転すると、エクマン理論で上昇流を弱めるように働いていたメカニズムが、一変してむしろ上昇流を強めるように働き、短時間に非常に強い上昇流を作って雲が発生、それが壁雲へと成長することが判明。この理論による予測は過去の観察値とも一致し、さらに、複数の台風のシミュレーションによって有用性が確認された。

 今回の結果により、台風の強度予報の精度を飛躍的に向上できる可能性がある。さらに、台風以外の現象にも応用できる可能性があるという。

論文情報:【Journal of the Atmospheric Sciences】A Dynamical Mechanism for Secondary Eyewall Formation in Tropical Cyclones

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大学ジャーナルオンライン編集部

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