九州大学大学院と理化学研究所の共同研究グループは、発育性股関節形成不全の患者から聴取した詳細な家族歴や発症年齢、治療歴などの情報を解析し、発育性股関節形成不全の遺伝的リスクが強いほど変形性股関節症の発症や進行が早まることを明らかにした。
変形性関節症は世界最多の関節炎であり、病態解明が強く求められている。変形性関節症の中でも股関節痛を来す変形性股関節症のリスクとして、股関節の発達が不十分で軟骨の摩耗を生じやすい発育性股関節形成不全が指摘されてきた。発育性股関節形成不全の病態が分かれば変形性股関節症の理解につながるが、その病態と変形性股関節症への進展要因は十分分かっておらず、特に遺伝的要因については不明だった。
そこで研究グループは、293名の発育性股関節形成不全の患者から詳細な家族歴情報を聴取。発育性股関節形成不全を有する近親者の有無やその近親者が何親等であるかを患者ごとに集計し遺伝的な要素の強さの指標とした。
その結果、発育性股関節形成不全を有する近親者の数が多い患者ほど股関節痛の発症年齢が若いことが分かった。また、発育性股関節形成不全を有する近親者を持つ患者のほうが、そのような近親者を持たない患者よりも人工関節手術を受けるリスクが高く、股関節痛発症から人工関節手術を受けるまでの経過観察期間が短いことも確認された。
今回の結果より、発育性股関節形成不全の遺伝的リスクが変形性股関節症発症や重症化に関与することが示された。これはゲノムレベルでの発育性股関節形成不全や変形性股関節症における遺伝子研究の価値を保証するもので、今後のゲノム研究による両疾患の病態解明が期待されるとしている。