量子科学技術研究開発機構の早川岳人上席研究員らの共同研究グループは、超新星爆発で放出されるニュートリノによって、自然には存在しないテクネチウム98(98Tc)が生成されることを理論計算によって予測した。研究グループには、国立天文台、東京大学、東京工業大学、九州大学、理化学研究所などの研究員が参加している。

 質量が太陽の8倍以上ある恒星は、寿命の最後に重力崩壊型超新星爆発を起こす。この爆発の初期に、中心部の原始中性子星から膨大な数のニュートリノ(素粒子)が放出され、そのニュートリノがエネルギーの一部を外層に落とし超新星爆発を生じる。この時、一部のニュートリノが既存の原子核と反応し、タンタル180等の新しい核種を生成する。6種類のニュートリノ(注)のうち、反電子ニュートリノ以外の5種類のニュートリノによる上記核種生成は分かっていた。もし、反電子ニュートリノの寄与の大きい核種が存在すれば、6種類のニュートリノ全ての平均エネルギーが評価でき、超新星爆発の理解に大きく寄与する。

 研究グループは、98Tcがニュートリノで生成された可能性に気づき、関連するニュートリノ原子核反応率を計算し、超新星爆発モデルを用いて98Tcの生成量を計算した。その結果、反電子ニュートリノの寄与が最大20%あることが判明し、反電子ニュートリノの寄与が大きい重元素の初めての発見となった。また、隕石研究が進展すれば、太陽系形成時の98Tcの量と超新星爆発が発生した年代が評価できることを示した。

 今回の研究は超新星爆発の6種類のニュートリノ全ての平均エネルギーの解明、近い将来に期待される超新星爆発の反電子ニュートリノのエネルギーの予測に寄与する成果とされる。

(注)電子ニュートリノ、μニュートリノ、τニュートリノとその反ニュートリノである反電子ニュートリノ、反μニュートリノ、反τニュートリノの6種類。

論文情報:【Physical Review Letters】Short-Lived Radioisotope 98Tc Synthesized by the Supernova Neutrino Process

大学ジャーナルオンライン編集部

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