東北大学大学院の川畑伊知郎特任准教授らの研究グループは、軽度認知機能障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症について、血漿バイオマーカーを用いた疾患識別のための新たな定量化技術を確立。これにより、各疾患を高い精度で鑑別することが可能になった。
認知症や運動障害など増加する加齢関連脳疾患の早期治療介入の実現には、発症前の正確な神経変性リスク予測と疾患鑑別が非常に重要。微量採血で済む血液バイオマーカーの利用は安全・簡便で低コストだ。研究グループは以前の研究を基に、脂肪酸結合タンパク質(FABP)ファミリータンパク質(FABPs) の疾患リスクの予測マーカーとしての有用性に着目し、レビー小体病の状態を反映する可能性を検討した。
研究では、アルツハイマー病、パーキンソン病、レビー小体型認知症、軽度認知機能障害の患者 600 名と健康な対照群の血漿中の FABPs レベルの測定・比較を実施。その結果、FABPs血漿レベルの各疾患における増加または減少が認められた。これにより、FABPs が各疾患を鑑別する潜在的なバイオマーカーと考えられた。
さらに、FABPs を含む複数のバイオマーカーの血漿レベルを利用した疾患鑑別のためのスコアリング技術により、各疾患を高精度に区別することができた。これにより、FABPs がレビー小体病の潜在的な新たなバイオマーカーとして機能し、早期の疾患検出と他の加齢関連の脳疾患との識別に役立つ可能性が示された。
今回の研究成果により、アルツハイマー病やレビー小体型認知症等の認知症やパーキンソン病の発症前予測が可能となり、早期治療介入による発症前の根本治療が期待されるとしている。