高齢化の進展により、あらゆる認知症が増加の一途を辿る中、認知症に対する新たな治療法の確立は、世界的に喫緊の課題だ。全ての認知症の中で半数以上の割合を占めるアルツハイマー型認知症についても、いくつかの症状改善薬が開発されているものの、未だ根治的な治療法はない。

 こうした中、東北大学の研究グループは、低出力パルス波超音波(low-intensity pulsed ultrasound:LIPUS)がマウスのアルツハイマー型認知症モデルにおいて認知機能低下を抑制する可能性があることを見出し、2018年6月から、世界で初めての医師主導治験を開始した。そして今回、治験の第一段階である安全性評価を主軸に置いた治療と経過観察が終了し、効果安全評価委員会でその安全性が確認されたこと、これを受け、第二段階となる有効性の評価を主軸に置いた治験治療を、2019年4月から開始することを発表した。

 LIPUS治療は、細胞・組織障害が非常に少ない新世代の低侵襲治療とされ、同研究グループは以前から、虚血性心疾患に対する有効性と安全性を動物実験レベルで報告してきた。一方で、近年、アルツハイマー型認知症と血管病が共通の危険因子を有することが明らかとなり、LIPUSをアルツハイマー型認知症の予防または治療に応用できないかと考えた。

 LIPUSをアルツハイマー型認知症モデルマウスの全脳に照射したところ、アルツハイマー型認知症の病理学的特徴の一つであるアミロイドβの蓄積が著名に減少し、認知機能低下を抑制する可能性が確認された。こうして、実際にアルツハイマー型認知症の患者を対象とした治験の開始に至っている。

 物理刺激を用いた革新的なアプローチであるLIPUS治療は、薬物では通過しにくい血液脳関門の影響を全く受けることがないなど有利な特徴を有する。本治験の結果をもとに、有効性が認められれば、アルツハイマー型認知症を根本的に治療できる可能性を持った世界初の治療法となることが期待される。

参考:【東北大学】世界初のアルツハイマー型認知症に対する超音波治療の医師主導治験 ―安全性を確認し本格治験へ―(PDF)

東北大学

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大学ジャーナルオンライン編集部

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