福井大学と筑波大学の研究グループは、好酸球性副鼻腔炎が鼻腔細菌叢でのフソバクテリウム菌の減少と関連していることを示し、その菌が産生するリポ多糖の減少が原因の一つであることを世界で初めて見出した。
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)は、一般に、かぜをきっかけに副鼻腔に細菌感染を生じて発症する。近年、2型炎症と呼ばれる特徴を持つ難治性の慢性副鼻腔炎が増加。鼻の中に多数の鼻腔ポリープが生じて鼻づまりと嗅覚低下が出現する。好酸球という白血球が多くみられ、好酸球性副鼻腔炎と呼ばれる指定難病となっている。病態は不明で、基礎研究と共に新規治療法の研究が望まれている。
研究グループは、免疫疾患である好酸球性副鼻腔炎の病因について、環境的な要因として、ヒトと共存する常在細菌叢(マイクロバイオーム)との関連に注目し、研究を行った。
その結果、好酸球性副鼻腔炎と非好酸球性副鼻腔炎のマイクロバイオームは異なることが示唆された。また、好酸球性副鼻腔炎は、非好酸球性副鼻腔炎と異なる細菌組成であり、特定の菌種系統が減少しており、特にフソバクテリウム・ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)菌の減少が最も顕著だった。そして、その菌が産生するリポ多糖(LPS)の減少が原因の一つであることを見出し、さらに、LPS による2型炎症の抑制効果を確認した。
今回の研究により、鼻腔マイクロバイオームを構成する細菌種やその代謝産物が変化することにより難治性副鼻腔炎(好酸球性副鼻腔炎)を発症する可能性が示された。今後は、鼻腔マイクロバイオームの改善による好酸球性副鼻腔炎の治療効果を検証し、生活習慣の予防やプロバイオティクスなど新規治療薬の開発へとつなげたいとしている。