東北大学未来科学技術共同研究センターの寺本教授らは、オートフォーカス機能と自己再生機能を有する「電気顕微鏡」の素子の開発に成功した。これにより、ピント調節をすることなく35兆個以上の体内の細胞を長時間直接観察することが可能となった。

 人体のイメージング技術は世界中で盛んに開発されているが、これまで生きたまま細胞レベルの細かさで観察できる細胞は、人の体の37兆個の細胞のうち、皮膚や胃腸など体表の2兆個の細胞に限られていた。残りの細胞については、採血や組織採取などにより身体から取り出さなければ観察が不可能であったが、隠れた35兆個の細胞を観察することができれば、がんのような、細胞に原因のある病気の早期発見につながることが期待される。

 今回、同研究グループは、溶液と電極の界面の抵抗を特異的に測定する方法を発見し、この原理を応用して電気顕微鏡を発明した。開発した電気顕微鏡は、被写体の電気化学的な特性をそのまま撮影できるため、ピントを合わせる必要がない。また、振動子が液体でできているため、振動子は自動的に更新され、機能が劣化することなく再生し続ける。この自己再生機能を利用し、72時間もの長時間にわたって細胞の運動を追跡することが可能となった。 

 電気顕微鏡素子は注射針などにも搭載可能であり、今後、レントゲンや内視鏡と並ぶ人体イメージング技術への応用が期待される。

参考:【東北大学未来科学技術共同研究センター】オートフォーカス・再生する電気顕微鏡 生体内で1細胞レベルの長時間追跡が可能に(PDF)

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