大阪大学と産業技術総合研究所の共同研究グループは、生物が利用可能な糖を化学合成する触媒プロセスの構築に世界で初めて成功した。

 グルコースやフルクトースなどの糖は、人を含む全ての生命の活動を支える物質として、また化学品等のバイオ生産技術における基質としても極めて重要である。しかし、従来の一般的な糖の生産プロセスは、水とCO2を原料として光合成を行う、つまり多くの水と栄養塩(リン、窒素など)ならびに大面積の土地を要する農業によって作られており、近年の食料需要の高まりやバイオマス利用技術の拡大に伴って、その供給の持続可能性には懸念が持たれている。

 一方、糖の化学合成については、塩基性条件下でホルムアルデヒドから単糖を生成する「ホルモース反応」が関心を集めた時期もあったが、副反応などの問題で糖の収率の向上が原理的に見込めないものであったという。

 このような中、本研究グループは、副反応を抑制できる中性条件下でホルモース反応を進行させる方法を探索し、タングステン酸ナトリウムやモリブデン酸ナトリウムといった「金属オキソ酸塩」が、中性条件下において糖の生成触媒として機能することを見出した。金属オキソ酸塩を触媒材料とした中性条件下での触媒プロセスでは、副反応の抑制を介して糖の生成効率が大きく向上し、さらに光合成と比較して少なくとも数百倍と高速かつ、水や栄養塩もほとんど必要としない。

 加えて、化学合成された糖は自然界に存在しないにも関わらず、微生物により食べられること、すなわち生物の可食糖であるとともに、バイオ生産の原料としても利用可能であることを示した。

 将来的には、本技術をもとに生物が利用可能な糖を“いつでも・どこでも・高速に”手に入る未来社会の到来が期待され、バイオ生産技術の一層の拡大に寄与するものと考えられる。

論文情報:【Chemical Science】Construction of an autocatalytic reaction cycle in neutral medium for synthesis of life-sustaining sugars

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