東京大学大学院工学系研究科の丸山一平教授と名古屋大学宇宙地球環境研究所の南雅代教授の研究チームは、コンクリートなどのセメントを使った材料が空気中からCO2を取り込んで固定化したことと、その固定量を証明する手法を開発した。
現在までの人類活動由来のCO2排出量のうち、5~8%はセメント生産によるものと言われている。そのためセメントを用いるコンクリート関連分野では、カーボンニュートラルに向けて、CO2排出の相殺手段として空気中のCO2を直接取り込み(直接空気回収技術、Direct Air Capture:DAC)、コンクリート中やコンクリート用材料の中に炭酸カルシウムとして析出させて固定化する手法が注目されている。一方で、DACを用いた天然の炭酸カルシウムと偽物の(人工の)炭酸カルシウムの真贋を見分ける方法や、固定したCO2を定量しカーボンニュートラルへの貢献を定量的に示す方法が存在していなかった。
本研究では、セメント系材料の試料中の炭酸カルシウムの14C濃度を測定することによって、空気中から固定したCO2量を求める手法を見出した。炭酸カルシウムが析出する化学反応において、13C/12C(13Cと12Cの割合)は反応後の炭酸カルシウム中と空気中とで異なる。13C/12Cを用いて、14C/12Cの同位体分別補正を行うことで、空気中から炭酸カルシウムとして固定したCO2量を14Cの測定値から見積もることができるとしている。
すなわち、セメント系材料の試料を空気に暴露する前後の14C濃度ならびに炭酸カルシウムの形で固定化された炭素量がわかれば、その試料が空気中のCO2を用いたものかどうか判定することもできる。
今後、CO2排出量抑制に向けた炭素税や排出権取引を想定すると、健全な市場形成のためにDACによるCO2固定化の真贋評価、適切なCO2固定量の評価に本研究成果が貢献するものと期待される。