東京工業大学の研究グループは、粒径1ナノメートル程度の極微小なナノ粒子「サブナノ粒子」を触媒にした炭化水素の酸化反応を開発した。本研究で対象とした炭化水素は、不活性な炭素‐水素結合を持つトルエンという有機分子で、市販の金属担持触媒ではほとんど活性を示さないが、今回のサブナノ粒子を触媒とした酸化反応では、既知のナノ粒子の約50倍となる触媒活性が示された。
石油や天然ガスなどの化石原料の主成分である炭化水素を有用な有機酸化物に変換する酸化反応は、学術的にも工業的にも重要な触媒反応だ。一般に、粒子をナノサイズまで小さくすることで触媒活性が向上することが知られており、特にサイズの小さな「サブナノ粒子」は、ひときわ高い触媒活性を発現すると期待されてきた。しかし、極微小で均一な大きさを持つ粒子の合成は技術的に難しく、触媒活性を正確に評価した研究例はなかった。
本研究では、デンドリマーと呼ばれる樹状型の規則構造を持つ特殊な高分子を鋳型として利用することで、粒子サイズが均一に整ったサブナノ粒子の合成に成功。この手法で、様々なサブナノ粒子を触媒としてトルエン酸化反応を起こしたところ、粒子のサイズが小さくなるほど触媒活性が向上することを発見した。また、遷移金属の中でも特に酸素親和性の低い白金が高い触媒活性を示すことを見出し、原子数19個の白金サブナノ粒子触媒で、既知の金属ナノ粒子よりも約50倍高い触媒活性を記録した。
本成果により、不活性な炭化水素から工業的有用物への高効率製造が実現するとともに、今後、サブナノ粒子に秘められた優れた触媒機能がさらに評価されていくことが期待される。
なお、本論文はドイツ化学雑誌「Angewandte Chemie International Edition(アンゲヴァンテ・ケミー国際版)」の「Very Important Paper(VIP)~全論文のTOP 5%以内~」として選定された。