熊本大学大学院人文社会科学研究部の小畑弘己教授は、北海道福島町の館崎遺跡から出土した縄文時代後期の深鉢形土器に推定500匹のコクゾウムシが練り込まれているのを見つけた。小畑教授は縄文人が栽培するクリの豊穣を願い、練り込んだのではないかとみている。
熊本大学によると、コクゾウムシはオサムシ科の甲虫で、現在では貯蔵米の害虫として知られている。小畑教授は2016年2月に館崎遺跡で出土した土器をCT撮影したところ、417点のコクゾウムシ成虫が練り込まれていることを発見した。土器は一部が欠けており、全体では推定500匹ほどを練り込んでいたとみられる。
練り込まれていたコクゾウムシは体長が西日本産のものより2割ほど大きかった。縄文時代の西日本では主にドングリと呼ばれるコナラ属の木の実が貯蔵されていたのに対し、北海道を含む東日本はクリが中心で、クリの高い栄養分がコクゾウムシを大きくしたと考えられる。
クリは北海道に自生しない植物だが、これまでの研究で青森県の三大丸山遺跡など円筒土器文化圏の人々が本州から運び出し、北海道で栽培されるようになったとされている。小畑教授は青森県の縄文人が船で海峡を渡り、コクゾウムシとともにクリの実を北海道に運んだ証拠の可能性があるとみている。