中央大学の白石広美研究員らの研究グループは、養殖を目的とした東アジアへのアメリカウナギの稚魚の輸入が急増しており、絶滅危惧種である同種の資源をさらに減少させる可能性があることを明らかにした。
ヨーロッパウナギのワシントン条約掲載、ニホンウナギの採捕量の低迷により、養殖のための稚魚(シラスウナギ)の需要は、ウナギ属の他の種に移行しつつある。ウナギの供給源は、一時期の東南アジアのウナギから、近年はアメリカウナギの需要増加が著しい。アメリカウナギは、ニホンウナギと同様、IUCNレッドリストに絶滅危惧種として掲載されている。
研究グループは今回、東アジアの国・地域の税関統計を入手。ウナギの稚魚の輸入状況を調べた。その結果、アメリカ大陸からのウナギの稚魚の東アジアへの輸入量は、2004年の2トンから2022年には157トンに急増し、過去最大となった。
アメリカウナギはウナギ属魚類19種の中で利用量が現在、世界最大とみられ、カリブ海諸国などの生息国ではIUU(違法・無報告・無規制)漁業や違法取引、社会問題が生じている。一方、東アジアの国・地域では、アメリカウナギを含む異種ウナギの養殖に用いる量を2014年漁期の水準にとどめる合意があるが、今回の輸入量の値が正しければ、その水準を大きく上回る。
研究グループは、アメリカウナギと同様、他のウナギ種でも採捕・輸出の急増はあり得るため、種の保存のためウナギ属は属全体としてモニタリングや管理を進める必要があるという。日本はウナギ消費量の3分の2を輸入に頼り、アメリカウナギも多いとみられる。アメリカウナギを含むウナギ属の持続的な利用の実現に向けて日本の主導的な役割が求められるとしている。
論文情報:【Marine Policy】Early warning of an upsurge in international trade in the American Eel