上智大学国際教養学部のジェームス・ファーラー教授が東京都杉並区のJR西荻窪駅周辺で個人経営の飲食店を対象にした調査をしたところ、地域コミュニティの社会インフラとして機能していることを見つけた。ファーラー教授は小規模ビジネスが成り立つ建築物を維持する重要性を示唆する結果とみている。

 上智大学によると、ファーラー教授は2015年から2023年にかけて西荻窪の個人経営の飲食店関係者約70人を対象にデータを収集し、分析した。その結果、飲食店がカフェ、レストランなどという業態を問わずに人々のネットワークを築く場所になり、さまざまな社会活動に政治的に動員される場所になっていることを見つけた。

 カフェのオーナーの1人が住宅建築により、地域で親しまれてきたケユカの木が伐採されることを知って存続運動を展開し、小さな都市公園が生まれるきっかけを作った事例も発見した。

 現代の東京都では住民の高齢化や大型再開発の進展、大企業による食産業の寡占化などから、飲食店を舞台とした地域コミュニティに危機が訪れている。西荻窪の飲食店は飲食や社交を通じて地域のアイデンティティを定義する役割を担っている。ファーラー教授は個人経営飲食店を核とした地域エコシステムが世界中の都市でモデルとなり得るとみている。

論文情報:【Food, Culture & Society】Urban foodways and social sustainability: neighborhood restaurants as social infrastructure

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