大阪大学の山本容正招へい教授らの共同研究グループは、ベトナムの地方住民を調査し、約7割の住民が、抗生物質であるコリスチンに耐性を示す大腸菌を腸管に保有していることを明らかにした。国際的な監視・まん延予防対策が急務としている。今回の成果は、大阪健康安全基盤研究所、琉球大学、タイビン医科薬科大学(ベトナム)の研究者との共同研究によるもの。
コリスチンは難治性多剤耐性菌感染症治療では切り札となる抗生物質だ。近年、コリスチン耐性の性状が他の菌にも容易に伝達することが分かった。コリスチン耐性遺伝子が他の耐性遺伝子を持つ病原菌に移れば、あらゆる抗生物質に耐性を示し、最後の手段であるコリスチンにも耐性を示す「悪夢の細菌」と呼ばれるスーパー耐性菌が生じる恐れがある。
コリスチンは抗菌剤として畜水産領域で飼料添加物として世界的に利用されている。研究グループは、開発途上国でのコリスチン耐性菌保菌状況を知るためにベトナム・タイビン省で調査を行った。その結果、地域コミュニテイー住民98人の糞便からコリスチンに耐性を示す菌の検出率(腸管に棲息している割合)は70.4%(69人)だった。いずれの耐性菌も伝達性コリスチン耐性遺伝子を保有していた。
今回初めて途上国住民のコリスチン耐性大腸菌の保菌率が高いことが示されたが、先進国ではほとんど検出されない。病原菌ではないため無症状で治療対応は必要ないが、耐性遺伝子が他の病原菌へ伝達されると、抗生物質の効かない難治性感染症が増大し医療現場での脅威となるため、国際的な耐性菌監視体制強化と迅速なまん延予防対策が求められるとしている。