龍谷大学は、世界的に深刻化する生物多様性の急速な喪失を背景に、日本の大学では初となる「ネイチャーポジティブ宣言」を発出した。
「ネイチャーポジティブ(自然再興)」とは、自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させることを意味する。国連の「生物多様性条約第15回締約国会議」(COP15/2022年12月)において、新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、この中で、「ネイチャーポジティブ」の方向性が明確に示された。
2030年までに「ネイチャーポジティブ」を実現する世界目標が定められ、それに向けた行動が求められており、日本国内では2023年3月末に「生物多様性国家戦略 2023-2030」が閣議決定され、ネイチャーポジティブの実現に向けた取り組みが進められている。
龍谷大学は創立400周年を迎える2039年度末までを期間とする長期計画「龍谷大学基本構想400」において、自らを省みて他を利する「自省利他」の行動哲学を掲げ「仏教SDGs」を推進し、先端理工学部や農学部、生物多様性科学研究センター等では、教育・研究・社会貢献の各分野で生物多様性にかかる取り組みを展開するなど、ネイチャーポジティブに資する諸活動を行ってきた。
これらの活動を象徴するのが、瀬田キャンパス(滋賀県大津市)に隣接する「龍谷の森」だ。コナラやアカマツが優占する針広混交林の二次林である約38haの里山林は、2024年3月18日付で環境省が定める自然共生サイト(「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域)に認定される。
また、「龍谷大学基本構想400」では2039年の将来ビジョンとして、『まごころ~Magokoro~』ある市民を育み、新たな知と価値の創造を図ることで、あらゆる『壁』や『違い』を乗り越え、世界の平和に寄与するプラットフォームとなることを標榜しており、ネイチャーポジティブに資する取り組みの推進は、この将来ビジョン実現に向けた重要な一施策と捉えている。
今回の「龍谷大学ネイチャーポジティブ宣言」の発出により、龍谷大学では、持続可能な社会の実現に向け、ネイチャーポジティブを先導する大学としての決意を広く社会へ表明し、それに資する取り組みを推進していく。
<龍谷大学 ネイチャーポジティブ宣言>
1.仏教の観点から、教育研究活動を通じてネイチャーポジティブに寄与する人間を育成します。
2.人文・社会科学から自然科学まで幅広い知見を有する大学として、ネイチャーポジティブにかかる研究成果を社会実装します。
3.国・地方自治体・企業・NGO・NPO等と連携し、ネイチャーポジティブに向けた諸活動を推進するとともに、新たな価値創造に向けた取り組みを共創します。
4.これらの活動に留まることなく、自身の行動を省み、自然と共生する世界の実現に向けて取り組みます。