上智大学文学部の川口茂雄教授、堤田泰成研究員、胡婧特別研究員らの研究グループは、東京藝術大学美術学部近現代美術史・大学史研究センターが所蔵する資料から九鬼周造、岩下壮一、田辺元ら近代日本を代表する哲学者が大正~昭和前半に記した直筆の書簡群を発見した。
上智大学によると、この資料は東京藝術大学の上野直昭初代学長の関係資料。総数200点以上に及び、いずれもこれら哲学者が上野学長に宛てて書き送った。近代日本を代表する哲学者の思想や生涯を新たな側面から解明できる第一級資料で、研究の詳細は上智大学文学部哲学科の「哲学科紀要」に掲載され、オンライン公開されている。
上野学長は美学・日本美術史の研究者。大阪市立美術館館長、旧制東京美術学校校長、新制東京藝術大学学長などを歴任した。2010年代になって親族から日記やノート、書簡など多数の資料が東京藝術大学に寄贈されたが、膨大な分量と古い手書き資料のために解読が困難な部分があることから、網羅的な調査が進んでいなかった。
研究グループは哲学者が差出人である書簡群に焦点を当てて調査を進め、書簡群が日本の哲学史研究に重要な資料であることを確認した。今後、東京藝術大学と連携し、資料内容のさらなる研究や出版を進める予定。
参考:【上智大学】九鬼周造、岩下壮一、田辺元など近代の日本を代表する哲学者の直筆書簡群を発見しました 著名哲学者の思想と生涯を新たな側面から解明しうる第一級の資料
論文情報:【哲学科紀要】九鬼周造、岩下壮一、田辺元など哲学者たちの大正~昭和前半期の書簡発見について-東京芸術大学美術学部所蔵の上野直昭関係資料の調査から