金沢大学の西川裕一助教、中京大学の渡邊航平教授、マリボル大学(スロベニア)のAles Holobar教授、広島大学の前田慶明准教授、マーケット大学(アメリカ)のAllison Hyngstrom教授らの共同研究グループは、男性と女性で運動神経活動の特性が異なることを初めて明らかにした。
ヒトの運動を理解する上で、運動に関する指令を脳から筋肉まで伝える「運動神経」の活動特性を理解することは重要である。しかし、これまでの多くの運動神経活動に関する研究では、男性を対象とすることが多く、運動神経活動の性差に注目した報告は非常に少ない。
本研究では、男性と比較して女性は靭帯損傷のリスクが高いこと、脳卒中の症状が重度になる傾向があることなど、さまざまな性差の根底に、神経系の性差が存在するのではないかと考え、今回、運動神経活動の性差を検討した。
研究は、表面電極により筋肉が動いた際に生じる電気信号を皮膚の上から捉えることができる高密度表面筋電図法を用いて、簡便かつ痛みなく非侵襲的に運動神経活動を計測する手法で実施した。対象を男性13名、女性14名の健常若年者27名とし、人差し指を外転(外に開く)させる際の筋活動を、最大筋力の10%時、最大筋力の30%時、最大筋力の60%時のそれぞれで計測した。
その結果、最大筋力の10%~60%のすべての運動課題において、女性の方が過剰な神経活動を呈していることがわかった。また、利き手と非利き手の非対称性(活動の違い)については、女性は運動神経活動に非対称性がないにも関わらず、男性のみ利き手と比較して非利き手の運動神経活動が過剰であることを明らかにした。
本研究により、同じ運動強度であっても女性は男性よりも過剰な運動神経活動を呈し、神経活動の負担が大きいことや、男性は女性よりも運動神経活動の非対称性が大きい(非利き手の方が過活動)ことが判明した。これらの知見は、性別に応じた運動方法の考案、病気や怪我の発症リスクの解明などへ応用されることが期待される。