中部大学の松田一希准教授らの国際共同研究グループは、ボルネオ島に生息するテングザルが絶滅の予兆を示しているとする調査結果を明らかにした。調査には北海道大学やイギリス・フランス・中国の大学・研究機関が参加した。

世界に生息する霊長類種の半数以上が、生息地の減少で絶滅の危機にあるとされる。しかし、ヒトを含む霊長類は長寿であり、生息環境の悪化がすぐには個体数の減少として表面化しないため調査が難しく、実際長期的な観察研究例はほとんどない。

研究グループは、2004年~2014年の間、マレーシア領ボルネオ島サバ州キナバタンガン地域に生息するテングザルの生態を調査。テングザルはボルネオ島の固有種で絶滅危惧種に指定されている。同時期に、キナバタンガン地域では主にパーム油生産のための農園拡大で、東京ドーム約2000個分に相当する9200ヘクタール以上の森が消失している。

調査の結果、合計の頭数は保たれているものの1つの群れを構成する個体数が約15%減少したことが判明。これまでアフリカや南米で行われた霊長類の調査では、最初に群れのサイズが縮小し、その状態が続くと個体数が減少することが報告されている。テングザルも同様の状態に近づいている可能性がある。

パーム油の生産は、インドネシアとマレーシアで世界の8割以上を占め、日本にも植物油として年間60万トン近くが輸入される。その生産のために広大な熱帯林が伐採され、アブラヤシ農園が拡大するにつれ、多くの野生動物がその生息地を追われている。貴重な動物種絶滅の危機に対する責任は日本にもある。今後の持続可能なアブラヤシ農園の開発に日本政府や日本の関連事業者は対策を講じる必要があるとしている。

論文情報:【Oryx】Population dynamics of the proboscis monkey Nasalis larvatus in the Lower Kinabatangan, Sabah, Borneo, Malaysia

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