東京大学大学院とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の共同研究チームは、男性医師より女性医師に治療された患者の方が、死亡率や再入院率が低い傾向にあり、また女性医師の治療は女性患者の方にメリットが大きいことを明らかにした。
従来の研究では、女性医師による診療が特に女性患者に良い影響があることや、医療内容が患者の性別により差があることが指摘されてきた。しかし、担当医の性別が内科入院患者の死亡率や再入院率に与える影響が、男性患者と女性患者で異なるのかどうかは不明だった。
研究グループは、米国のメディケア(65歳以上の高齢者のほぼすべてが加入する医療保険)の診療報酬データ(患者776,927人、治療した医師42,114人)を用いて、女性医師と男性医師が治療した緊急入院患者の30日患者死亡率と30日再入院率を比較。この際、緊急入院患者を、入院患者のみを診る医師(ホスピタリスト)が治療した場合に限定し、ランダムな割り付けとみなせる条件で観察研究(「自然実験」)を行った。
その結果、入院後30日以内の死亡率は、女性患者では、女性医師の治療で8.15%、男性医師の治療で8.38%と、女性医師の方が0.24ポイント統計学的に有意に低く、男性患者では、女性医師の方がやや低い傾向だったが有意差はなかった。再入院率も同様の傾向。女性医師の治療は女性患者に「利益」が大きいと分かった。
研究チームは医療現場に女性医師を増やす必要性を指摘し、背景には男性医師の女性患者の症状に対する過小評価や、女性患者が女性医師に症状を気兼ねなく話せることなどがあると推測する。今後は、そのメカニズムを詳細に解明することで、質の高い医療を男女平等に提供する必要があるとしている。